今回のテーマは、サービス付き高齢者向け住宅の登録手順についてお話します。
その前に、気になった新聞記事がありましたので、その解説から始めます。

その記事とは、昨年10月26日付けの「高齢者住宅 介護漬け横行」というショッキングな見出し記事です。

「高齢化を受け国が整備を進める『サービス付き高齢者向け住宅』(サ高住)など老後の住まいで、運営事業者が不必要な介護保険サービスを提供したり、自社の介護利用を入居の条件にしたりといった事態が横行し、監督する自治体の50%強が問題視していることが25日、厚生労働省の初の全国調査で分かった。」

問題は、包括報酬の施設サービスではない出来高制の在宅サービスを利用するサ高住と住宅型有料老人ホームが該当し、介護サービスの種類や量、事業者を利用者が自由に選択できるべきものが、運営事業者により制限され、かつ、区分支給限度基準額いっぱいのサービスを強制しているのではないか、それは介護保険の財源を無駄に使っていることになり、介護報酬の引き下げを今年度から行う予備調査となっていた点です。

国(厚生労働省)は、どうも、在宅サービスは施設サービスより費用がかからないものと勘違いをしているようです。
確かに、在宅サービス費用(12.3万円/月)は施設サービスの約1/3(29.6万円/月)、地域密着型のグループホーム等の約1/2(23.0万円/月)です。

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在宅サービス費用は区分支給限度基準額の約4割とされていますが、本当にこれだけの介護サービスで在宅での介護が可能なのでしょうか?

例えば、要介護3の方のケアプランにおける在宅サービスの量を見てみると、下記のようになります。

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区分支給限度基準額いっぱい利用しても、夜の介護や短時間介護は介護保険ではカバーできません。
その隙間は家族の方の負担となっている訳です。

介護する家族の方がいらっしゃればいいのですが、これから更に増える高齢者の単独世帯や老夫婦世帯では無理があります。

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それでも、自宅での介護を国(厚生労働省)は進めようとするのでしょうか?

今年度の介護報酬の見直しでは、自治体が推進しようとは思もってはいない「24時間随時対応定期訪問介護(いつの間にか24時間の文字が外れ『定期巡回・随時対応型訪問介護看護』となっていますね)」を重点化(点数を上げる)するよう検討していましたが、その結果は、全体平均とおなじマイナス査定でした。
宮城県の場合では、やっと仙台市が今年度8か所の事業所認可しましたが、焼け石に水です。

要支援・軽度介護度の高齢者の方が入居するサ高住・住宅型有料老人ホームでは、区分支給限度基準額いっぱいの利用は必要ではないでしょうが、中度・重度介護度の高齢者の方が入居する介護型のサ高住・有料老人ホームでは施設サービスと同様の24時間介護体制が不可欠です。

本題に戻りまして、サ高住の登録手続についてご説明します。

ご存知のように、登録先は、都道府県の宮城県庁ですが、政令都市である仙台市の場合では、仙台市役所に申請します。

サ高住登録とサ高住補助金の手続手順は下記の通りです。

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サ高住登録の前提条件として、建築確認許可が必要ですので、プランの確定及び請負金額の確定が条件となります。
これは、単に登録だけですと、実際には建築されないものまで登録される可能性がある為、それを阻止するためと思われます。
しかしながら、この条件を満たせば、登録可能ということになります。

サ高住登録件数は、全国で約17万戸ですが、近い将来、建築の総量規制(建築を認めない)が考えられます。
というのも、サ高住登録制度を規定している法律「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)」には、「高齢者居住安定計画」の策定を各都道府県に求めています。
各都道府県は、高齢者の住まい(主にサ高住+住宅型有料老人ホーム)をいつまでに高齢者人口の数%にするという目標設定をしなければなりません。
その数に従って、更に市町村も同じように数量設定をします。
もし、既に目標数を達成している場合は、数量を制限する訳です。
介護付有料老人ホームやグループホームが公募制になっている状態と同じになります。
宮城県ではその規制はまだありませんが、、既に埼玉県などで、その規制が始まっており、その手段としてサ高住登録の事前協議制度となっています。

【※宮城県の場合は、第5期(2012~2014年度)介護保険事業計画において
2011年の東日本大震災の影響で、その計画は明確にはなっていませんでしたが、
今年度からの第6期介護保険事業計画では明確になると予想されます。】

事前協議制度になりますと、事前協議の前の事前相談の段階で、「残念ながら、建築予定地エリアには他のサ高住が建っていますので、建築は無理です。」と告げられ建築を断念することになります。

下記に既に事前協議制度が始まっている埼玉県の場合を掲載しましたので、
ご参考までにご覧ください。

ちなみに、埼玉県の平成26年度までのサ高住整備目標数は、5,800戸ですが、平成26年11月末現在の登録件数は、9,336戸となっています。平成28年度までの整備目標が9,000戸だったのですが・・・。

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大草俊夫 さんのプロフィール

サ高住、高齢者向け住宅、介護・福祉のコンサルタントです。
大草俊夫

大草俊夫
(おおくさとしお)

オーエイチ・サポート株式会社
長崎県生まれ

一般社団法人 全国介護福祉事業普及振興機構 理事長

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