「賃貸住宅の経営で儲けようとは考えないでくださいね」
ハウスメーカーや大手アパート会社は、地主さんに話を持ちかけるとき、公然と言うそうです。
それでは一体何のために建てるのかと問うと、「節税のため」と応えるのです。
「賃貸住宅を建てれば、相続税が2000万円も5000万円も助かりますよ」
「固定資産税が6分の1に下がりますよ」
というセールストークで地主さんに話を持ちかけます。
地主さんも、
「そんなに相続税が浮くのなら」
「固定資産税が安くなるのなら」
と話に乗るわけです。
確かに、賃貸住宅の建築は相続税対策になります。これは今に始まった話ではなく、バブル期は銀行が資産家に、節税を理由に賃貸住宅の経営を強く勧めていました。
「入居者は私たちが引っ張ってきます」
と豪語し、資産家に借金をさせて物件を建てさせたのです。
今は、その物件のほとんどが不良な負債となって資産家の家計を圧迫しています。
相続税対策になるどころか、財産を食いつぶす存在になってしまったのです。
これでは、大きな無駄遣いをしてしまったようなものです。
よくよく考えてから不動産経営を始めなければ、あっという間に資産は負債へと変わってしまいます。
気がついたら金融機関への返済が持ち出しになり、家族の生活が圧迫されるようになっては何のための土地活用だったのか分かりません。
節税対策を第一に考えるのでおかしくなるのです。賃貸住宅の経営はビジネスなのです。
いくらお金をかけて、いくら儲けるのか、利益を第一に考えて行うべきものです。
「儲けようと思わないでください。節税のためにするのです」
という営業の言葉がいかに間違っているか、分かるでしょう。
ビジネスであるからには、当然利益をあげることを考えなければなりません。
この点を抜かしているから賃貸住宅の経営がうまくいかないのです。。
利益を追求するためなら、競争しなくてはなりません。
世の中の経営者は自分の企業が倒産したりしないよう、売り上げを仲ばすためにいかに顧客を満足させるのかを日々考え、サービスの向上に努めるわけです。
しかし、税金対策のためであるなら、いかに顧客を満足させようか、質のいい賃貸住宅を提供しようとかなどと、真剣には考えないでしょう。
ただの箱を提供すればいいだけです。
恐らく、オーナーになってからは物件の管理をすべてメーカーに任せて、一歩も中に足を踏み入れたことのない人も大勢いると思います。
自分が住むわけではないので、外から見て「美しい仕上がりだ」と惚れ惚れするぐらいでしょう。
そして、そういうオーナーが運営している物件は、いずれ資産が負債へと変わっていくのです。
通路にひび割れが起きても放置し、外階段のペンキがはがれても塗り直そうともせず、入居者に言われなければ快適な住宅にしようとは思わない。
自分のビジネスの商品を大事にする感覚が抜け落ちているのです。
とにかく建てさせようと躍起になるアパート会社の営業と、深く考えずにその話に乗ってしまう地主たちが日本の賃貸住宅事情を悪化させています。
節税対策を目的にして、乗り切れるほど、賃貸住宅の経営は甘くはありません。
だから、本気で経営を考えて欲しいのです。
儲けようと真剣に取り組んで、本当の賃貸経営を目指してください。
住宅メーカーは建てさせてしまえば役割はほぼ終わったも同然で、後はその建物が劣化していこうが意に介しません。
結局、被害を受けるのはオーナーさんであり、入居者なのです。