第3回講義でご説明しましたように、甲が、賃貸借契約書にADR手続合意条項を搭載している場合、上記事例が発生した場合、どのような手続きとなるかについて解説していきます。

ADR機関で和解会議を開始する


/pic/2/tmb/20110803180403.jpg  甲は、乙と本件賃貸借契約を締結する際に、土地活用ドットコムが加入するADR機関を仲介機関とするADR手続合意条項(具体的な搭載方法はご相談ください。)を搭載しており、乙も契約締結時にこれに合意し署名捺印しています。

 そこで、甲は、指定ADR機関へ、和解委員を代理人として滞納家賃支払い及び貸室明け渡しの交渉を依頼します。指定ADR機関は、甲から申し立てを受けると乙へその旨を通知し、和解委員との話し合いが開始されます。
 通常、甲乙双方に和解委員が選定され、どちらにも属さない中立的和解委員長の3者で和解に向けた話し合い(これを指定ADR機関では和解会議とよんでいます)を開始します。

 そこで、甲と同じ立場である貸主の皆様は、本件紛争を早期に解決するにあたり、どのような主張及び譲歩が考えられるか検討してください。


紛争を早期に解決するためには


 前回講義で説明しましたが、甲が、あくまで全額の滞納家賃請求にこだわっていたのでは、乙の明け渡しは頓挫暗礁にのりあげます。
 重要なのは、権利の主張を制限し、相手が気持ち良く立ち退けるよう環境を整備する必要があるのです。そしてその環境を整備できるのは、甲だけであり、従って、そのテーブルに乗せるイニシアチブは甲にあることが理解できると思います。

 本件類似紛争において、最も効果的だった話し合いの環境整備は、次の条件を相手方に提示することでした。

1.滞納家賃の請求権を放棄する。
2.上記合意と引き換えに期限までに明け渡す。

というものです。相手方は、支払い能力がないわけですから、悪戯に金員の請求を重ねても話し合いにはりません。
 そこで、これをあえて放棄することで、相手が譲歩できるよう環境を整えるのです。

 和解の要件は「譲歩」にあるといっても過言でありません。皆様にも、法的権限に基づくあくなき請求は、結局、紛争解決を暗礁に乗り上げるものであることを勇気をもって理解し、決断することです。 ぜひとも、実践願います。
 次回は、敷金返還請求を巡るADR手順について講義することとします。

(指定ADR機関)一般社団法人日本民事紛争等和解仲介機構(和解会議事務局03-5795-1423) 

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小泉 賢司

小泉 賢司
(こいずみ けんじ)

中央建設企業経営振興事業協同組合連合会理事長
東京都生まれ

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