和田清人和田清人

不動産会社はいつから悪いイメージをもたれるようになったのか

和田清人 不動産会社はいつから悪いイメージをもたれるようになったのか

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不動産業界の胡散臭さをブッタ斬りしたコラム。
構造的に抱える問題点が明確になります。

曰く、今は「賃貸情報をネット通販していると考えればわかりやすい。」

「私の希望の物件を探してください」ではなく「これください」に対応。
町の説明もできず、すぐに決まりそうなもの以外は放置。
やることは契約書面の取り交わしのみ。

その結果、何もしていないのに手数料だけ取ると思われちゃった。

で、手数料を下げたら下げたで、
「利幅が薄くなった分、新たに違う価値を創出しようというのではなく、
 既存の仕組みの中で利益を生む口実を考え続けてきた」・・・_| ̄|○

それが保証料であり、24時間駆けつけサポート料であり、
カギの交換代であり、消毒料、害虫駆除代、消臭料・・・

アカンやん・・・(^^;

ただ、過去に「AIや大手に真似できない・・・」で拾ったように、
単なるニーズのマッチングだけならAIに置き換わっちゃいます。

記事にもあるように、地域密着で地元の不動産問題に関わっている、
ドロ臭いお店が最後は生き残るんでしょうね。

若い方々が、そこに関心を持たないのが悩ましいところですが・・・(^^;


【不動産会社の印象が悪化したわかりやすい経緯】
業界はあまりにも複雑化してしまった

「ブラック企業」という言葉の一般化のおかげか、以前ほど不動産会社を悪しざまに言う声を聞かなくなった気がするが、それでも不動産業はなぜかイメージのよい商売ではない。

だが、昭和の新聞連載漫画のベストセラー『サザエさん』に登場する不動産屋の花沢さんは決して悪い人ではなかったはず。それが今では、正直であるだけでマンガになってしまうほど。いつから“悪い人”のイメージがつくようになったのか。主に賃貸仲介を例に見ていこう。

今、世の多くのビジネスはシンプルに向かっている。かつては多くの業界で、生産者と消費者の間には複数の卸売業者、問屋などが挟まっているのが当たり前だった。ところが、農家や漁師が消費者に直販するスタイルが出てきているように、昨今は中間事業者を排除する方向がある。ところが、それにまるで逆行しているのが不動産業界である。

わかりにくさがイメージの悪さに

賃貸契約時の煩雑さを見ればわかりやすいだろう。30年前には礼金・敷金、前家賃を大家に、仲介手数料を不動産会社に、損害保険料を保険会社に払えばよかった。

だが、今では連帯保証人を頼んでいるにもかかわらず保証会社に保証料を払い、24時間駆けつけサポートにサービス利用料を払い、カギの交換代や消毒料、害虫駆除代、消臭料……と、物件あるいは会社によって支払い項目が倍ほどにも増えている。しかも、会社によっては空室に消臭剤を撒く程度ということすらある。

「そのわかりにくさが悪いイメージにつながっている」と指摘するのは不動産会社尚建の徳山明社長だ。バブル期以降、「楽して儲かる」と業界には不動産会社のほか、投資家など多くの人が参入したが、一方で家賃下落や空室の増加など収益の低下もあり、それが業界内に新たなビジネスを生み続けてきた。

ただ、利幅が薄くなった分、新たに違う価値を創出しようというのではなく、既存の仕組みの中で利益を生む口実を考え続けてきたことが業界を複雑化し、怪しく見えるようにしてしまった。

実際にどんなことが起きてきたか。

まずはバブル期。今につながる出来事が2つある。1つは不動産投資という考え方の一般化だ。その頃までの賃貸物件は農家など土地を持っている人がそこに住宅を建てて貸すもので、多くの大家は自分で掃除するなど管理も行っていた。そこに「もっと建てれば儲かる」と吹き込んだ人たちがいる。

「そうしたら掃除の手が足りなくなる」と反論する土地所有者には「大丈夫です。全部私たちがやります。不動産経営は何もせずに楽して儲かります」と答えた。そこに「土地活用」という言葉、管理会社、サブリースという仕組みが生まれたわけである。サラリーマン大家が生まれたのもこの時代だ。区分所有の1室やワンルームアパート1棟を買い、ローンの金利相当分の所得税が戻るという節税メリットがウケた。

こうした大家に共通するのはいずれも素人で、自分では何もやらない、責任も取りたくないという点だ。それが後日のさまざまなサービスの登場を受け入れる素地になったのである。

もう1つが1990年に登場した「レインズ(Real Estate Information Network System=不動産流通標準情報システム)」だ。不動産情報の標準化・共有化を目指して登場したものだが、これによって1つの物件で入居者を決めるまでに、複数の不動産会社が関わることが増えた。それまでは建物所有者から直接依頼された不動産会社(元付などという言い方をする)だけが情報を持っていたが、レインズで情報が公開されて以降はマッチング(客付)だけを業とすることができるようになったのである。

不明な費用項目が増えた理由

新しいビジネスが誕生したとも言えるが、一方で「契約までが仕事」という会社の中には「入居後はどうでもいい」と考えるところもある。近年、入居者の勤務先などを偽装するビジネスが登場しているが、そうしたビジネスが生まれるにはそれなりの理由があるのである。

また、1件の契約を2、3社で分け合うことになれば、同じ仕事をした際の報酬は当然ながら半分、3分の1と減っていく。それをどうするか。カギ交換や消毒といったワケのわからない費目は、長い時間をかけてその埋め合わせのために生まれてきたと言ってもよいのである。

といってもレインズが誕生したのはバブル真っただ中。誰も現在のような状況は想像していなかった。しかし、バブル崩壊後、売買価格ほど急激ではないものの、賃料も緩やかに下落、入居者の懐具合も寂しくなり、空室増と住宅をめぐる状況は徐々に悪くなっていく。2000年以降には礼金・敷金の下落が始まる。

「2000年前後にそれまで家賃の各2カ月分が一般的だった礼金・敷金をゼロにした商品を出した会社があり、それがきっかけになりました」(全国賃貸住宅新聞・永井ゆかり編集長)

さらに2001年にはJ-REITが登場。個人の大家さんよりも収益に厳しい彼らは、早く入居を決めるのが大事と2004~2005年頃から契約を決めてくれた会社に対して「AD(広告費と言われる。バックマージンと言えばわかりやすい)」を払うようになる。

これにより、消費者にとっていい物件よりも、自分たちに広告費が入る物件を決めようとする不動産会社が出始める。歩合制が多い不動産会社の営業マンにとってはどれを決めるかで収入が決まるとなれば、自分が得する物件を勧めたくもなるわけだ。

同時期くらいから入居者が払う仲介手数料を半分、あるいはゼロに、という動きも出てくる。ADが取れるなら、消費者には安く借りられる会社というイメージをアピールしたほうが得ということだろうが、ここでの値下げ合戦は業界の仕組みをより複雑にしていく。家賃滞納を保証する会社の登場がその1つだ。

それまでは不動産会社が自ら審査を行い、滞納に対しては督促を行っていたものをアウトソーシングしたのである。それにより、不動産会社は代理店手数料という新たな収益源を得る。

以前からあったカギの交換費に加え、消臭費や浄水器販売など付帯ビジネスも徐々に増え、2005年前後には現在あるような形になっていたと永井氏は言う。不動産会社の業務範囲も各社異なるようになる、何をやっているかがわかりにくい状況が出現した。

IT系企業の参入がイメージ悪化を助長

2000年以前に比べると、賃貸住宅契約時の費用のうち、礼金・敷金、仲介手数料は全体に安くはなっているが、ほかの費目が増えた分を考えると、単純に安くなっていると言い切れるかどうか、契約、物件によっては微妙なのである。

かつてに比べて利幅の薄くなりつつある不動産業界だが、それでも新たに参入する人たちがいる。IT系の人たちだ。たくさんの情報を同じ基準で集めて検索できるようにするのはITの得意とするところ。そのため、多くの人は気づいていないが、不動産会社と言いつつ、基本はIT企業も多いのである。そして、それがさらに不動産会社のイメージを悪くしている部分がある。

「IT系不動産会社は、賃貸情報をネット通販していると考えればわかりやすい。『私の希望の物件を探してください』ではなく『これください』という人を相手にしています。

町や物件の説明もできず、多くの問合わせからすぐに決まりそうなもの以外は放置する。やることは契約書面の取り交わしのみ。これでは不動産会社は何もしていないのに、手数料だけ取ると思われることになります」と、不動産会社ルームキューブの榎本敦史社長は話す。

もちろん、賃料と立地、広さなどの条件が合っていればどんな部屋でも問題ない人ならばそれで問題はなく、実際、そうしたサービスも散発的に登場している。2014年には仲介手数料は無料だが、物件探しと見学有料というビジネスモデルが話題になった。しかし、現存はしていない。

最近ではインドのホテルチェーンがソフトバンクの支援を受けて始めた「OYO LIFE」が敷金・礼金・仲介手数料なしで、入退去がスマホ1つで完結するという画期的なサービスを開始して、話題になっている。

複雑でわかりにくい従来の賃貸契約に比べると明快で面白いが、賃料が高く、とくに長く住めば住むほど高くなる仕組みが選ばれるかどうか。また、賃貸居住者はホテルのような部屋に、モノを持たずに暮らしたい人ばかりでもなかろう。これ以外にもこれまでIT投資が少なく、労働生産性が低い上に高齢化が進む不動産業界を変えようと、多くのIT企業が参入を始めている。少しずつなりともわかりやすくはなっていくのだろう。

発想を変えないとイメージも変わらない

だが、ITで賃貸業界がわかりやすくなったら不動産屋さんのイメージが変わるかと言えば、残念ながら、それはどうだろう。右から左に情報を流すだけの仕事をし、収益が減った分をヨソで掠め取ろうという発想自体を変えなければ事態は変わらない。

幸いなことにごくごくわずかではあるが、それに気づき、徹底したサービスを提供したり、町に関わり必要な施設を生み出すことで本来の不動産業を行ったり、地域密着で地元の不動産問題に関与するといった面白い活動をしている不動産会社もあり、地道に業界は変わり始めている。

もう1つ、賃貸仲介は不動産会社不要でも可能なため、本来は「大家さん」と呼ばれる人たちが変わり、直接、入居者と契約を結べるようになればクリーンになるのだろうが、そちらは変わりそうにない。

過去にはいくつか、直接取引を可能にするサイトが登場したが、いずれも早々に撤退。現在も同様なサイトはあり、これまで以上に続いてはいるが、メインとなることはなかろう。だが、その中でもできる大家は自分で直接入居者を見つけるようになるなど、わずかながら変化の兆候は見られる。

複雑化しすぎていて、どこに清浄化への糸口があるか見えにくい業界ではあるが、動きは確実に起こりつつある。個人的にはこれほどに複雑で遅れている業界のほうがやりようはあり、面白い気もするが、どうだろう。
(6月10日 東洋経済オンライン)


土地家屋調査士 大阪 和田清人(image)
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