(image) アメリカに住んだことのある友人から聞いた話によると、「ホームデポ」というホームセンターに行くと、家を一軒建てられるほどの材料が揃っているそうです。ドア、ドアノブ、窓、配管設備、屋根、タイル、棚、流し、風呂桶……とにかく、家にある材料でないものはない、というぐらいに豊富な材料が揃っています。 アメリカの人たちは自宅に不具合が生じたら、こういうホームセンターで材料を買い、自分達の手で直します。アメリカでは築30年など当たり前で、築100年以上の家も珍しくありません。古い家を好んで買う人も多いので、誰もが自分の家をていねいに使い、売るときに備えています。 アメリカは持ち家を所有することで個人資産の40%が形成されるといわれています。アメリカの産業の3分の1は不動産関係であり、国民の資産が国の資産になるという考えのもと、政府が国民の資産形成に関心を持ち、住宅政策にも力を入れているのです。 住宅ローン金利は2棟まで所得から全額控除することが可能で、年収の3倍以下で住宅を購入できます。ですから、30代の若い夫婦でも充分住宅を買えるようになっています。 また、定住するよりは7年前後で住み替えていく生活が一般的です。個人の住宅は2年以上所有することを前提として販売した場合は利益が出ても税金をとられないので、気軽に家を売ったり買ったり換えられるシステムになっているのです。日本も一昔前は住宅の買い替えは普通でした。けれども、バブル期までは土地が値上がりし、買う人もお金を持っていたから可能だったのであり、政策がよかったわけではありません。日本の土地政策は、昔も今も変わらずに条件が悪すぎます。 アメリカはリースホールドではなく、フリーホールドという制度になります。フリーホールドとは自由に持てる持地、つまり土地所有権を指します。イギリスでは地主が手に入れていた利益を、アメリカでは住宅購入者が手に入れるという考え方です。 新大陸によるアメリカには、大土地所有者がいなかったのも、フリーホールドが発展した一因です。フリーホールドによる住宅開発は、デベロッパー(住宅都市開発業者)にとっても、造成開発費用をより容易に回収できるという利点もありました。 イギリスにおける地主の役割となるのが、アメリカでは住宅地環境管理団体(HOA)です。HOAと住宅を購入する人との間で環境管理契約を結びます。この契約によって、住宅地の環境が正しく管理されるのです。 やはり、美しい街づくりはしっかりした制度をつくり、ある一定の基準を設けておかないと出来ません。イギリスもアメリカも、自分の家だけではなく、家がある地域一体をIセットにして考えています。気に入った物件があっても、隣に建っている家が気に入らなければ買おうとしません。 この点は、隣の家など気にせず、自分の家さえよければそれでいい、と考えている日本人とは大きく異なります。日本では家を建てるとき、まわりの調和まで考えません。だから赤い屋根もあれば黄色い屋根もあり、茶色い屋根も黒い屋根も混在しているようなバラバラの街並みになってしまうのです。日本の住宅地が外国人から美しくないと評されるのも、ここに問題があります。 日本は第1章でお話したように、木賃アパートを無計画に建てていった結果、街並みはそこかしこで壊されてしまいました。出だしがそうだったせいなのか、今でも周りの景観を考えない傾向があります。何年か前に裁判になった国立市のマンションの件も、「街並みを壊す」という理由で、市民はマンション建設に反対していました。それでも、不動産業者は強引にマンションを建てるだけの力を持っています。こうして、さらに無秩序な都市ができあがっていくのです。 なぜ街並みを重視するのかというと、美しい街には大勢の人が集まってくるからです。そうすれば、その一帯は資産価値が高まります。自分の住宅の資産価値を高めたいのであれば、自分の物件だけを考えていても意味はありません。街全体を考えなければならないのです。