賃貸住宅業界は、(1)入居者、(2)地主・家主、(3)金融機関、(4)建設業者、(5)賃貸管理業者の五者で形成されています。日本の賃貸住宅をレベルアップするには、この5つの関係する人たちの五角形=ペンタゴンがバランスよく正しく保たれることが条件です。今は、残念ながら入居者や地主・家主は権利が小さく、その他の三者が圧倒的に強い立場にあります。 それでは、それぞれの抱える問題点を見ていきましょう。 この問題を解決しなければ、賃貸住宅の未来はありません。1.入居者の問題点 (1)仮住まいだからとあきらめている 仮住まいの意識と一戸建て住宅を持てない失望感により、賃貸住宅に対してのあきらめ意識がある。 (2)高家賃による生活費の圧迫 劣悪な環境に嫌気が差し、グレードアップを目指そうとすると家賃もその分高くなる。生活できなくなるので、広い快適な賃貸住宅への引越しを断念する人も多い。 (3)永住できない 80m2や100m2の賃貸住宅が日本には存在しないので、永住など出来ない。万一あっても、給与の50%の家賃負担となる。2.地主・家主の問題点 (1)本当は賃貸住宅経営などやりたくないと思っている 節税対策でやむをえず賃貸住宅を建てている。これでは住む人の立場に立った良質な賃貸住宅を建設できない。 (2)後ろめたい気持ちがある 先祖代々の農地にアパートを建てるのは、先祖に申し訳ないと心の片隅で思っている。日本の賃貸事情を改善しようとする、社会的な意義や理念、哲学などは、まったく存在しない。 (3)利益を出すことを考えない もっとひどい場合は、利益を出すことにも後ろめたさを感じる。これで賃貸経営に失敗してしまう。3.金融機関の問題点 (1)建物査定能力がゼロ 見積書と返済能力による、安易な融資体制になっている。本当の建物の価値を査定する能力がない。最悪の場合は、返済できなくなった相手を破産するまで追い詰め、不動産を取り上げてしまう。この体制が日本人の借金嫌いの原因となっている。 (2)賃貸住宅経営に対する審査能力もゼロ 賃貸住宅の経営ノウハウをまったく持っていないので、欧米型の収益還元法による経営の審査ができない。これが原因で、日本には優良で長期的に資産となる賃貸住宅がない。4.建設業者の問題点 (1)建設費が高すぎる 建設費が高いと借入金が増えて返済額が多くなり、すべて家賃に反映される。家賃を安くする第一条件は、建設費が限りなく安いことであり、これがないと高い家賃を容認することになる。 (2)入居者をお客様と考えていない 入居者の賃貸住宅に関する要望を聞こうとしない。防音性能の低い鉄骨・プレハブ・木造アパートを平気で提供している。 (3)入居者のライフスタイルに合わせた高級でセンスのある賃貸住宅をつくろうという意識がない (4)建物は建てたら終わりと考え、賃貸住宅の管理に責任をもとうとしない5.賃貸管理業者の問題点 (1)斡旋と仲介しか興味がない 賃貸仲介・管理業者は今の市場にある賃貸住宅の斡旋と仲介だけが仕事であり、よりよい快適な住宅へ改善することなどに興味がない。不景気で自社の生き残りに必死であり、管理費を取っておきながら、管理を怠っている業者もいる。 (2)建築や税金関係の知識が乏しい 建物の構造やコストや賃貸経営に関する専門的な知識と税務知識が不足している。 (3)賃貸経営のノウハウもなく、オーナーに正しいアドバイスができない 今後、これらの問題点を改善し、正五角形を描けるようになるのかどうかは、五者がそれぞれ現状の問題点を把握し、意識改革に努めなければならないでしょう。 入居者の皆さんも、何も賃貸だからと卑屈になる必要などありません。賃貸住宅を選ぶときも、1ケ月かそこら不動産屋をまわって安易に決めてしまうのではなく、分譲住宅を買うのと同じぐらいじっくりと真剣に選ぶような意識が大切です。一人一人がそういう意識を持てば、劣悪な物件を勧めるような業者は淘汰されていきます。
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