/pic/40/tmb/20120310123351.jpg これは数年前に本当にあった話です。

 地方新聞に、とあるアパート・マンション会社の広告が載りました。
地元ではそれなりに名が知られた会社です。
その広告には、こういう謳い文句が載っていました。

 「当社は優良企業による一括20年借り上げを行っています

 オーナー候補にとっては魅力的なセリフです。
優良企業に一括借り上げしてもらいたいと、誰もが望んでいます。

 一括借り上げとは、いわゆるサブリース契約のこと。
賃貸物件を販売会社が全室一括して借り上げ、入居者に貸します。
空室があっても、販売会社がオーナーに家賃保証してくれるというシステムです。
賃貸住宅のオーナーにとっては入居者がいなくても収入を得られるので、安心して運営を任せられるわけです。
特に優良企業の社員さんが住んでくれればありかたい話です。

 この会社は、何度も同じキャッチフレーズで広告を打ち、非常に売り上げを伸ばしたそうです。
しかし、何か引っかかる部分はありませんか?

 「優良企業による一括借り上げ」とありますが、その優良企業とはどこのことでしょうか。
この質問を会社にぶつけると、「それは当社のことです」という答えが返ってきたのです。
驚くことに、「うちが借り上げまして、誰に貸すかは分かりません」というのです。
この会社が本当に優良企業であるなら虚偽広告ではないのでしょうが、公開会社ではなく、賃貸管理についてはまったく実績のない会社なので、一種のサギともとれます。

 さらに、この会社にお願いするときは20年間一括借り上げの契約を結ぶわけですが、契約書をよく読むと、「同等内容で他社に契約を任せることが出来る」と書いてあります。
この契約を任せる他社とは、いくつかの大手の賃貸管理会社を指します。
それだけならまだしも、任せる管理会社によって、借り上げ期間が10年だったり8年だったりとバラバラなのです。

 つまり、20年一括借り上げなどは真っ赤な嘘であり、問題の会社では賃貸管理など一切していないというわけです。
系列の賃貸管理会社があるにはあるのですが、社員が2名程度の実績ゼロの会社でした。
それに加えて、20年間同じ家賃ではありません。
2年ごとに家賃の見直しがあって、下がることもあると契約書に小さく書いてあるのです。
こんな状態で「優良企業」といっているのですから、そのたくましさにあきれ果ててしまいます。

 この会社はラッキーなことに、誠実で優秀な営業マンが十数名います。
彼らが地主さんの元を訪れて魅力的な話をするので、多くの人が会社の実態も知らずに契約を結んでしまったそうです。

 しかし嘘はやがてばれるもので、新聞に誰かが「あの会社は嘘をついている」と投書し、その会社は新聞で広告を打てなくなりました。

 さらに、この会社は違法行為も行っていました。
自社で建築をせず、100%下請けに出しているのです。
丸投げは建設業法で禁止されています。
そのうえ、その丸投げされていた会社が倒産してしまったのです。
建築途中で倒産された地主さんの中には8000万円以上の被害になった人もいます。

 これだけ内部がガタガタの会社に、安心して自分の大切な土地を任せられるでしょうか?

 何も知らずに契約を結んでしまった人は、将来負債となる物件を建ててしまっているでしょう。

 この会社は今でも活動は続けていて、時折現場説明会の案内をしているのを見かけます。
契約だけをしてりベート(利益)を受け取るだけの販売会社なのですが、ここの営業マンは契約すると多額の業績給をもらえます。
ですから熱心に地主を訪問します。
建築費用の5%がこの営業マンに入る仕組みになっているので、年収6000万円以上の社員も数人いるというのですから、多くのオーナーを犠牲にしたうえで裕福な生活を送っているのでしょう。
この転職してきた優秀な営業マン達は以前のアパート会社ではトップ営業だったそうです。
しかし、以前の全国展開の有名な会社だとりベートは3・9%だったので、より有利な5%という業績給の会社に移ったのです。
アパート・マンション業界というのはこういう問題をかかえていて、営業マンの転職や退職が日常茶飯事のごとく行われていることも要注意点です。

 このケースのように、ありもしないことをでっちあげたり、誇張して広告を打っている賃貸住宅会社は少なくありません。

 この手の広告の嘘を見分けるにはどうすればいいのでしょうか。

 こういう企業は、実際に会社の人と話を進める中で、肝心なところは誤魔化したり、曖昧な表現を用いたりするものです。
だからどんどん質問を投げかけてみること。
少しでも引っかかる部分があったら、納得いくまで質問をし、それでも疑問を感じたら契約をしないことです。
何もその会社でなければ賃貸住宅をつくれないわけではありません。

 自分の資産を託すのですから、時間をかけて、比較して、納得のいく業者を探すのがオーナーとなる第一歩です。
くれぐれも大手だからと言って、テレビ宣伝で安心したりせず、誠実で人のよさそうな営業マンを簡単に信用したりせず、事業経営者として賃貸住宅を検討されることを願います。

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久保川 議道

久保川 議道
(くぼかわ よしみち)


アサヒグローバルホーム株式会社 取締役会長
ゴールドトラスト株式会社 取締役会長
ゴールドエイジ株式会社 取締役会長

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