/pic/40/tmb/20120309080444.jpg かつて、日本の住宅は「ウサギ小屋」と揶揄されていたものでした。

その代表が公団住宅です。
部屋を家族数に合わせて細かく区切るような間取りで、全棟・全部屋で同じという、個性も何もない住宅です。

 しかし、今は人口が減少しているという事情もあり、その頃と比べて毎年一人当たりの居住面積は1m2ずつ増えているといわれています。今買うのと同じ値段で、10年後には10平米広い部屋を買えるようになるでしょう。

 現在の日本の戸建て住宅の平均的な面積は122m2です。イギリス102m2、フランス112m2、ドイツ120m2を追い越しました。
脱・ウサギ小屋です。これからは、アメリカの150m2を目指してどんどん広くなっていくでしょう。
ところが、賃貸住宅は相変わらずウサギ小屋です。
日本の賃貸住宅1673万戸の平均面積は44.5m2であり、狭い13.4坪程の住宅に、平均世帯数2.8人が暮らしています。

 一体、なぜ日本の賃貸住宅だけがウサギ小屋から脱出できないのでしょうか。

[日本の地価が高いから?]

 これは以前も触れましたが、日本より広々とした賃貸住宅に住めるニューヨークでは、地価は日本と同じぐらい高いのです。
それに、一戸建ては平均150m2の広い住居を実現しているのです。

[融資制度が無いから?]

 日本に35年間低利で、固定金利の賃貸住宅金融公庫があります。
65m2以上の面積には割増融資もつくことになっています。
これは世界一有利で一番優遇されているシステムです。融資制度はあるのです。

[建築費が高いから?]

 これも以前述べました。
高どまりですが、一戸建て住宅と比べても賃貸住宅は坪当たりの建築費用は同程度の価格なので、賃貸住宅だけ建築コストがかかって広い住宅ができないというわけでもありません。

これらのことを考えると、賃貸住宅が貧しい一番の原因は、私は借家住宅に住む人と建てる地主の「日本人の意識」だと思うのです。

 日本では、賃貸住宅は持ち家を持てない人が一時的に住む場所、仮住まいだとずっと考えられてきました。
持ち家に対抗する手段として、安い家賃で住居を確保できることが賃貸住宅の最大の売りでもあります。

 入居者は「安いんだから狭くても我慢しよう。貧弱でもしょうがない」と自分に言い聞かせます。
それは仮住まいだからという理由で、住まいと生活に高いレベルを求めない習慣となってしまった低い意識が原因ではないでしょうか。

 粗末なアパートが量産されるのは、安い家賃で賃すという前提があるからです。
家賃を下げるために、建築コストで削れるところは徹底的に削ります。
台所回りや洗面白や建材などは安いものを使い、できるだけ安い建築費にしようとします。

 アパートの家賃の計算は、部屋数と床面積が基本になっています。
ハウスメーカーやアパート会社は、地主さんに対して養鶏場と同じような感覚でアパート経営を説明してきました。
つまり、限られた敷地内で、どれだけ多くの入居者を詰め込むのか、という論点になっているのです。

 バブル期に乱立したワンルームマンションなどがいい例です。
場所は不便で、狭い間取りの劣悪な環境で、一棟で何十人もの人が生活していました。
ファミリータイプも同じでした。

 仮住まいであるという感覚である限り、賃貸住宅は使い捨て商品のように入居者にも扱われてじまいます。
そして業者も、入居者がよりよい環境に住めるようにとは考えないのです。

 賃貸住宅に永住できないのは、環境が悪すぎるからです。
分譲マンション並みの物件を提供すれば、転勤などの事情がない限り、誰でも長く住み続けたいと思うでしょう。

 つまり、入居者を長く確保したいのなら、安くて広くて設備も充実している物件を建てればいいだけです。
建築費を安くするために詰め込み主義で狭い部屋に入居者を押し込めて一時的に儲けを得ようと考えるよりは、長期的に空室が出ないほうが収入は得られます。
ところが、アパート会社は少しでも高く売り抜けることしか考えず、地主であるオーナーも目先の利益に飛びついてしまうので、いつまでたっても賃貸住宅は仮住まいの域を脱せられないのです。

 平成12年に住宅品質確保促進法が施行されました。
これは日本の住宅の質を上げる制度になると、期待する人も多いでしょう。

 この法律は3つの制度を柱にしています。

(1)新築住宅の基本構造部分などについて、10年間瑕疵(欠陥)担保保証責任をもつこと
(2)住宅の性能を表示するための制度の創設
(3)住宅の紛争処理のための機関の設置

この制度が出来たことにより、住宅メーカーは地主さんへ賃貸住宅を販売しやすくなりました。
たとえ経済的価値に劣る住宅であっても、この制度に対応している物件なら金融機関の融資対象になれるのです。
地主さんは優良物件を持っているのだと思い込み、喜んで融資を受けます。

 しかし、この融資は物件の価値を評価しているわけではありません。
何らかの事情で売るときは、購入時と同じ値段では全く売れません。
金融会社は賃貸住宅の抵当権を順位一番で押さえていますが、売却して債務を返済しようとしても、多大な債務が地主の手元に残るだけです。

 この制度に対応した物件を販売している業者が、必ずしも20年30年先にも資産価値のある物件を約束してくれるとは限らないので、ハウスメーカーの営業の提案には十分注意をするべきでしょう。

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(くぼかわ よしみち)


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