(image)  持ち家に住むべきか、賃貸に住むべきか。 これは誰にとっても命題であり、住宅政策や住宅経営の課題としても今までずっと検討されてきました。 アメリカでは約7割がマイホームを持ち、日本も6割が持っているといわれています。一般的に給与所得が高まれば、持ち家比率が高まります。 しかし、持ち家か賃貸かの選択は、必ずしも所得の水準によって決定されるわけではありません。最近は、分譲マンションの広告で「家賃並みのお値段で購入できます」と謳っているように、家賃と同じぐらいの額を住宅ローンで払えば住宅は購入できるようになりました。 「毎月家賃を支払っても、永久にあなたのものにはなりません。持ち家なら、同じお金を払い続ければ25年後か30年後にはあなたのものになるんですよ」というわけです。 しかし今、日本では不動産価格が急落しているので、将来負債となる可能性があるのです。たとえば世帯主が突然リストラされ、収入がなくなったとき、賃貸なら安い家賃のところに引っ越して当面の生活を凌ぐことは出来ます。 持ち家の場合は、売らないことには引っ越せません。けれども、買ったときの半値か3分の1の値段になっているので、売った後にも借入金の負債が残ってしまいます。それを知り、売却を断念して半値の価値の物件に2倍のローンを払い続けている人は大勢います。一生住み続ける人は資産価値など気にせずに家族のライフスタイルだけを考えればいいのですが、このご時世では、そうもいきません。 この点を考慮すると、今の日本では賃貸を選ぶほうが得策だといえます。住宅取得で負債を抱え込まず、すぐれた住環境を自分のライフスタイルに合わせて自由に選択できるのです。 そして、ここで噴出するのが、「賃貸住宅は貧しすぎる」という問題点です。誰でも、身軽に住める賃貸住宅を選びたいのはやまやまですが、「住まい」と呼ぶにはあまりにもお粗末な物件であり、「こんな物件に住むぐらいなら、持ち家のほうがいいかな」と思うようになってしまうのです。 所有主義からレンタルの時代へと、時代は変わりつつあります。それなら、時代の流れに合わせて日本の住宅も変わっていかなければなりません。これからの住宅業界の課題は、賃貸住宅を改善していくことです。そこにこそビジネスチャンスは埋もれているのですが、大半の不動産業者は気づいていないようです。房、万全なセキュリティー対策など高機能を実現し、広い部屋を確保することも可能になりました。まだ豊かな住まいだとはいえませんが、昔に比べれば「住まい」と呼べるレベルの物件を提供できるようにはなっています。 ところが、賃貸住宅だけ一向に状況が変わらないのです。ここだけ置き去りにされていますが、これからの日本の動向を考えると、賃貸を充実させるのは国家レベルで考えなければならない重要事項です。少子化、一人暮らしの老人の増加、不安定な景気、高所得者層と低所得者層の二極化、就労外国人の増加、多様になったライフスタイル。これらの課題を解決できるのは、賃貸住宅だけです。 一生住めるような、広くて快適で家賃が安い賃貸住宅があれば、数千万円という住宅ローンで苦しむ必要はありません。浮いたお金を海外旅行や車や趣味に使ったり、子供の教育費に使ってもいいでしょう。老後の生活資金を蓄える余裕も生まれます。まさに「いいこと尽くめ」です。 オーナーさんにしても、長期間にわたって収益を上げられるような物件のほうが、確かな資産形成となります。子供や孫にも引き継げる「宝」です。 賃貸住宅で永住型マンションやアパートをつくるのは夢のような話ではありません。この業者の人達が賃貸を改善しようと本気で取り組み、賃貸を利用する人の意識改革が進み、オーナーさんやアパート会社が一時的な儲けを得ることに腐心しなければ、いつでも実現できます。 大手プレハブメーカーや大手アパート会社は、永住型の賃貸住宅を実現させる技術とノウハウを持っています。実行に移さないのは、すでに説明した通り、永住型の物件であるコンクリートマンションはつくるのに時間がかかり、全体的な売り上げが落ちるので、会社を維持できなくなるからです。食の世界では、採算を度外視して「消費者においしくて安全なものを」と無農薬野菜や薬漬けになっていない牛や豚を飼育する農家がありますが、不動産業界では「消費者にとっていい物件」を分かっているにもかかわらず、なかなか実行に移す人はいません。それがこの業界が衰退していく原因でもあるのです。 しかし、誰かが取り組まないことには、日本の賃貸住宅事情はこの先も変わりません。実際に、まだまだ少数ですが、永住型の賃貸マンションも生まれています。草の根運動のようですが、私はいつかこの考えのほうが正しいのだと認められる日が来て、日本の賃貸住宅事情は激変すると考えています。
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