(image)  こんなケースがありました。 松阪市に土地を持っている佐々木さん夫婦に相談を受けたときの話です。不動産の相続税評価額は約8億円あり、相続税は2億円ほどになる地主さんです。 旦那さんは土地活用としてアパート経営を考えていたので、私が説明に伺うことになりました。話をするうちに、奥さんのほうがアパート経営について乗り気ではないことが分かりました。 理由を聞いてみると、「うちの土地を貸して欲しいという人がいるんだ」というのです。 道路に面した土地600坪を、1坪800円で借りてレストランを経営したいという申し出があったそうです。単純に計算すると、月に48万円の収入があり、年間600万円もの利益が出ることになります。 それだけを考えれば、ホイホイと貸したくなるでしょう。しかし、そのレストランはこれから30年も50年もそこで経営を続けてくれるのでしょうか? それと、これが一番大切なことですが、この家には計算上、2億円という莫大な相続税の支払い予定があることをこの奥さんは忘れているのでしょうか。年間たった600万円の収入を増やしていったいどうするのでしょう。 私がお話したのは、税金には大きく3つあるということ。利益にかかる所得税、不動産にかかる固定資産税、相続にかかる相続税です。この3つには優先順位があります。一番最初に手をつけて解決すべきものが相続税で、この家には相続税という目に見えない2億円の借金があるということを奥さんは忘れています。二番目が固定資産税を少なくすること。三番目が所得税です。レストランに土地を貸して年間600万円収入を増やして、それに対してまた所得税を支払うということは私には考えられません。「一番最初にやるべきことは相続税対策ですよ」と申し上げましたが、借金は嫌いだと言われるので、なかなか話は進みません。 私は思わず、「何を考えているんですか!」と奥さんを叱ってしまいました。 しかし、奥さんは今度は「相続税で困ったら土地を売ればいいじゃないの」と簡単に答えます。 既にレストランの建物が建っている貸地では、なかなか買い手は現れません。本人にとっては大切な財産であっても、他人から見たら何の価値もないものです。レストランオーナーに半値八掛けで売れればまだいいほうです。 また奥さんは、600万円の利益を10年貯めれば6000万円になり、それも子供達に残して、相続税を支払いしたいと思っています。しかし、その6000万円にも相続税はかかります。それも土地・建物より現金のほうが、計算上、割高です。「次に、会社をつくるの。会社をつくって、そこに財産を移せばいいのよ」 どこまでも楽天的な奥さんです。ペーパーカンパニーでもつくろうというのでしょうか。素人が会社をつくって財産を移すのは、そんなに簡単なことではありません。初めてつくったその会社自体にお金がないのに、どうして個人の所有する不動産を買い取ることができるのでしょうか。下手なことをすれば脱税だと見なされてしまいます。第一、そんなややこしいことをしなくても財産は守れます。 ここで、他のアパート会社なら、「当社はアパートだけではなく店舗用の物件も建てられますよ」とすかさず奥さんに話を合わせて建てさせようとするかもしれませんが、私は会社の利益より、奥さんに正しい考え方をしてもらおうと、一生懸命説明しました。 「いいですか、土地を売ると一言で言われますが、土地価格の計算の仕方があるんですよ」 これは、皆さんもぜひやってみてください。 まず、自分の土地の近くの物件をチラシなどで調べます。住宅を買う人が、どれぐらいで買っているのか、チラシの販売価格を見てください。 坪20万円なら、その半額が地主さんが土地を売る値段です。進入道路として確保する部分や造成、経費などを考えると、売る価格の半分の値段で仕入れないと不動産業者は利益が出ません。それで、一区画でも売れ残りが出れば利益がゼロになることもあります。 坪20万円で売っている土地の仕入れ価格は坪10万円です。300坪なら3000万円。手数料や取得などを引くと、約7割の2000万円しか手元には残りません。これが土地の売買価格です。この奥さんの場合は600坪でたった4000万円です。これではあと2400坪の土地を売らないと、2億の相続税はとうてい支払えません。一晩で大地主が地主でなくなるのです。そもそも土地を売って相続税をまともに支払おうとするから、おかしくなるのです。 土地はむやみに人に売ったり貸したりするものではありません。売ったところで、半値ハ掛けでしか売れないような世界です。相続税を考えるのなら、アパートやマンションを建てて経営したほうが、確実に家賃収入が入り、資産として子供にも受け継ぐことが出来、相続対策にもなります。 私は、佐々木さん夫婦には、とにかく小さなアパートでいいから1つ経営してみたらどうかと提案しました。3年ぐらいで結果は出るので、それでうまくいったら銀行からの借入金を増やして大きな物件を建ててみればいいのです。 現在、佐々木さん夫婦は、アパート経営の準備に入りました。 コンクリートマンションはきちんと建てれば負債にはなりませんから、「あのとき、レストランを開きたい人に貸しておけばよかった」と佐々木さん夫婦が後悔することはないでしょう。また、そんな後悔をさせないように、私も正しいアドバイスをして責任を果たします。
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