2017年10月、鳴り物入りでスタートした住宅セーフティネット制度。

空き家問題と、住宅弱者(単身高齢者、低所得者、障がい者、外国人など)対策の、
両方を解決する素晴らしい制度のはずだったんですが・・・

2021年3月までの3年半で17.5万戸の登録目標に対して、
現時点でわずか2.6万戸(14.9%)にとどまるんだって。

最大の理由は、
家主のリスク。

記事中のコメントが如実に物語っています。
「借家人に有利な借地借家法など現在の法体系のままでは、とても無理。」

要は、いったん入れちゃうと、どれだけ悪質な入居者であっても
「正当事由」を盾に追い出せないわけ。

日本でも1%いるといわれるサイコパスに当たってしまうと、
すべてを掃き出さなきゃなんなくなる。

だから、この制度を普及させるには、「定期借家契約」が必須なんですよね。

私たちの仲間はこれをずっと訴えていて、
ご自身も定期借家で単身高齢者をバンバン入れてらっしゃいますよ。

ご興味あります?
セミナーを企画しますか?(^^;


【生活困窮者向けの「セーフティネット住宅」はなぜ不評なのか】

 急増している単身高齢者たちは、賃貸住宅への入居を断られやすい。低所得者や障がい者、外国人、シングルマザーたちも希望する住まいになかなか入れない。「家賃滞納や不審死、孤独死のリスクがあり、厄介な人は不安」という大家の本音が横たわる。そこで国が新たに住まいの制度を設けた。

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 2017年10月25日から始めた「セーフティネット住宅」である。「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」を改正して作った。高齢者や月収15万8000円以下の低所得者、障がい者、被災者、ひとり親世帯を「住宅確保要配慮者」(要配慮者)と位置付け、一般住民も入居できるが、要配慮者を拒まない賃貸住宅とした。

 要配慮者には、国交省政令で外国人やDV被害者、犯罪被害者、矯正施設退所者なども定めた。また、自治体が新婚者、LGBT、UIJターンによる転入者などを含めることができる。

 大家が都道府県、中核市、政令市に登録すると、住所や間取り、家賃、面積などの詳細データがウェブサイト上で公開される。耐震性や25平方メートル以上などの条件がある。入居希望者はこのサイトを検索し、大家に直接申し込むという仕組みだ。

 住宅困窮者向けには公営住宅があるが、高倍率で入居難が続く。一方、全国的に空き家、空き室は増加傾向にある。そこで「ヒトとモノの課題を同時に解決できる」との思惑で国交省が立案した。アイデアは素晴らしかったが、施行後2年半の現在では、「失敗施策」の烙印を押されかねない状態だ。なぜつまずいたのか。

● 登録戸数は目標のわずか15% たった1社で6割を占める現状

 国は改正法施行3年半後の2021年3月までに17万5000戸を登録目標に掲げた。ところが、3月16日時点での登録はまだ2万6026戸にとどまる。目標のわずか14.9%である。1年後の目標達成は無理だろう。

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 まず、登録住宅をよく見ると、たった1つの会社が1万5129戸も管理しており、全体の58.1%を占める。異常な状態に驚いてしまう。そのすべては旧雇用促進住宅で、ビレッジハウス・マネジメント(東京)が管理運営する。

 同社は米国の投資会社、フォートレス・インベストメントグループによって設立され、廃止された全国の雇用促進住宅を2017年に買収し、「ビレッジハウス」として入居者募集を始めた。総数約10万5000戸に上っており、登録したのはその一部ということだ。住宅買収後に、フォートレス・インベストメントはソフトバンクグループの傘下に入った。従って、登録住宅の約6割はソフトバンクグループということになる。

 都道府県別では大阪府が約1万戸で、2位の東京都の約2000戸を大きく引き離して断然トップである。実はビレッジハウスが約4500戸も登録しているからだ。

 同社はこれからも北陸や中国、九州などで同住宅の登録を積極的に進めていく方針。全体のほぼ6割を占有する形は、今後も大きく変わらないだろう。登録住宅は、旧雇用促進住宅という特別な集合住宅に偏り、当初、国交省が期待した一般の賃貸住宅の大家からはそっぽを向かれている状態だ。

 その理由について、不動産関係者からは「新しい保証やメリットがない。これでは入居後のトラブルが予想される要配慮者にわざわざ貸す気が起こらない」「孤独死が起きたら事後処理に奔走する現状から何も変わっていない」「借家人に有利な借地借家法など現在の法体系のままでは、とても無理」という声が聞かれる。

 全国賃貸住宅経営者協会連合会の稲本昭二事務局長は「大家にとっての不安に何ら答えていない。例えば、身寄りのない借家人が亡くなると、賃借権や遺留品の相続権など厄介な問題に悩まされている」と訴える。

 国は制度の普及を図るため、家賃と改修費の補助制度を組み込んで、借り手や大家への便宜を図ろうとした。

 家賃は、市区町村が名乗りを上げると、同額を国が助成する。総額の上限は4万円。東京都豊島区や名古屋市、横浜市などが始めたが、全国でわずか29自治体にすぎない。家賃補助は長期にわたるため、「財政にゆとりがない」(東京都板橋区)と敬遠されている。

 しかも、家賃と改修費の補助は、入居者を要配慮者に限定した「専用住宅」にしか適用されない。東京都墨田区は総額2万円の家賃補助制度を設けたが、区内に専用住宅の登録がないため、利用者は出ていない。岩手県内の自治体で唯一、家賃助成を2018年4月から始めた花巻市でも、市内に専用住宅の登録がないため利用者はいない。同市では、登録住宅もビレッジハウスの2棟78戸だけだ。

 全国的にも専用住宅は3435戸(3月16日時点)で、全体の13.2%と少ない。つまり、せっかくの入居支援制度ではあるが、利用できる住宅が限定されており効果を発揮できない状態だ。

● 入居とその後の生活支援を行う 民間事業者「悠々会」のアイデア

 こうした国の住宅困窮者救済制度が空振り状態の中で、民間の事業者のアイデアが功を奏している。

 東京都町田市の町田市役所前。3月のある日、70代の男性と一緒に玄関に向かうのは、地元の社会福祉法人「悠々会」の職員、鯨井孝行さんだ。男性の生活保護の受給申請に同行していた。

 男性は、大手企業の社員寮に長年住みこみ料理長を任されてきたが、調理中に空だきを起こしたり、料理の味がおかしいと言われたりするようになった。診察で認知症と判明、仕事が続けられなくなり社員寮の立ちのきを迫られた。

 高齢で一人暮らし、認知症を患う人に借家はなかなか見つからない。困った男性がたどり着いたのが悠々会だった。というのも同法人は、「まるごとあんしん住宅」事業を手掛け、「住む場所にお困りの方、相談ください」と書かれたチラシを配布しているからだ。

 担当の鯨井さんは、すぐに町田市内の不動産屋をあたり、同法人が賃貸契約を結んで、男性の住まいを確保。男性は3月3日に引っ越した。鯨井さんはその部屋を訪ねて話し合い、介護保険サービスが必要と判断し、市内のケアマネジャーにつないだ。要介護1の認定となり、訪問介護やデイサービスを使えるようになった。

 「まるごとあんしん住宅」では、このほかに24時間の見守り、買い物や通院の外出支援、それに月1回の無料のランチ会もうたう。役所への事務手続きの支援も含まれ、この日の市役所への同行となった。

 入居した利用者は悠々会に毎月5万円を支払い、悠々会は住宅の大家に3万5000円渡し、残りの1万5000円が様々な生活支援活動にまわる。4年前から始めており、これまで50人の住宅困窮者の住まいを提供している。 

 その中の一人で生活保護を受けている70代の女性は、夫の特養入所が決まったため、家賃の低い住宅に移らざるを得なくなったという。2人ではまかなえた生活保護費の家賃が一人では足らなくなったためだ。

 デイサービスに通い、近所の商店での買い物を続けたいため、400メートル以内の引っ越しを望んでいた。条件が厳しかったが、たまたま家族が概要物件を見つけ出した。不動産屋とのその後の入居交渉を同会が担い、いつもの借り上げ方式を使い無事に住まいを確保できた。2年前のことだ。

 女性は右まひのため手すりが必要だった。そこで同会が入居前に大家と話し合い、手すりを付け、段差も解消した。

 入居とその後の生活支援のプランを考えた悠々会の陶山慎治理事長は「社会福祉法人としての地域活動です。空き室が多く、家賃が都心ほど高くない町田市だから実現できたこと」と話す。特別養護老人ホームやグループホームなどを運営する高齢者ケアの事業者が、子育て世帯や外国人までを対象にした「住まい」の事業を手掛けるのは極めて珍しい。しかも入居後の生活支援まで取り組む。

● セーフティネット住宅の現行制度では 大家が前向きになれる施策が足りない

 セーフティネット住宅の制度でも、利用者支援の仕組みは導入された。「居住支援協議会」と「居住支援法人」である。

 自治体が主導して不動産業者や社会福祉法人、社会福祉協議会、居住支援法人などで構成され、物件探しやマッチングなど入居相談にのるのが居住支援協議会。居住支援法人は、同協議会の中核であるとともに、入居時やその後の見守りなど生活支援を独自で担う個別の法人で都道府県が指定する。

 だが、協議会は2月末時点で、都道府県のほかには49市区町にしかなく、「中核市まではぜひ設けてほしい」とする国交省の期待もむなしく、仙台、岡山、静岡など8つの政令市にはない。支援法人も全国で283社しかなく、栃木や秋田、青森、島根の各県にはひとつもない。

 大家の不安を払拭するには協議会や支援法人の活発な動きが欠かせない。だが、その活動は義務付けではない。個別の登録法人や入居者とひも付けされているわけでもない。これでは、大家が抱く不安は解消されないだろう。

 市レベルでは最も早く、11年前に協議体を設立したのが福岡市。福岡市居住支援協議会の事務局でもあるが、「登録住宅の入居者を個別には把握していない。入居者への支援は業務とは思っていない」と話す。ほかの各地の協議体でも似たような姿勢だ。 

 入居者への支援活動は専ら居住支援法人に委ねられている。その居住支援法人は地域住民への生活支援活動で実績のあるNPO法人や会社、社団法人などが指定されている。だが、専用住宅が普及していないこともあり、新制度での活動はまだほとんどない。

 悠々会は東京都から支援法人の指定を受け、町田市の協議会の構成員となっているが、町田市には専用住宅がなく、登録住宅も5棟9戸しかない。このため、セーフティネット法に基づく活動にはまだ着手していない。自前の「あんしん住宅」の活動となっている。

 同様に借り上げ方式で空き室を有効活用するNPO法人が各地にいくつかあるが、セーフティネット住宅とのリンクはほとんど進んでいない。たとえ支援法人に指定されても、登録住宅の絶対数が少ないため、出番がないのが実態のようだ。セーフティネット住宅そのもののプランは良くできているものの、大家や自治体の関心を高めるインパクトには欠けるため増えない。

 自治体からは、「家賃補助を専用住宅に限定しないでほしい」(墨田区)、「低所得者の収入上限額を地域で変えてほしい」(世田谷区)など、現場の裁量を広げる要望が上がっている。大家に対しては「固定資産税の減免もあっていいのでは」(高橋紘士東京通信大学教授)、「関東地方で普及している契約更新料を認めては」(世田谷区)という声もある。

 いずれにしろ、登録戸数を増やさなければ制度は動かない。そのためには大家が前向きになるような施策が必要。入居後の福祉サービスを充実させることで大家の不安を払拭させる。そのためには、サ高住と同様に厚労省との共管制度として、居住支援法人をケアマネジャー並みの役割を持たせるのも一考だ。厚労省の「生活困窮者自立支援制度」の中で、「一時生活支援事業」との連携がうたわれているが、自治体レベルでは福祉部局との意思疎通は時間がかかりそうだ。

 特養や認可保育園の限界を突破して、企業を活用したサ高住や企業主導型保育園の先例からもっと学んではどうか。公営住宅の限界は明らか。そのためには支援法人への報酬をきちんと付けねばならないだろう。
(3月25日 ダイヤモンド・オンライン)
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200325-00232666-diamond-soci


土地家屋調査士 和田清人(image)
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