勝手に家賃を変えてしまうA社
水谷さんがアパート経営を始めて8年になります。
大手建設会社であるA社でアパートを建てたのですが、
家賃を相談もなく変えられてしまい、当初考えていた手取り金額を大幅に下回る事態に陥っています。
このままいくと金融機関への返済ができなくなるのは確実なので、戦々恐々とする毎日を送っておられます。
借金の残っているアパートを壊すわけにもいかず、水谷さんは途方に暮れています。
A社は全国的に有名な大手アパート会社です。
有名タレントをCMに起用していることもあり、CMの話をすれば、「ああ、あの会社ね」とすぐに分かります。
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水谷さんのもとに営業マンが訪れたとき、「こんな有名な会社の人が、私の土地を選んでくれたなんて」と、誇らしい気持ちになったといいます。
担当した営業マンも、誠実そうな人物でした。
水谷さんの話を真剣に聞き、あれこれとプランを提案してくれます。
他社と比べて、A社の提案する利回りは高めでした。
新築アパートは入居者が殺到するので高い家賃を設定しても大丈夫、地理的にも問題ないと太鼓判を押されて、心が動きました。
「当社の物件なら、高利回りを実現できますよ」
営業マンにニッコリ笑ってそういわれたとき、ほぼ心を決めたそうです。
「大手の物件なら、入居者も安心して選んでくれるんじゃないか。だから、他社より手取り収入が多くなるんだろう」
そう思い、契約することにしたのです。
幸運なことに、建物が完成する前から入居の申し込みが次々と入り、好調なスタートを切りました。
やはり大手企業に任せてよかったと、水谷さんは安心したそうです。
アパートは満室でのスタートとなり、最初の年はA社の収支計画(収入と支出の関係や、借り入れと返済の関係などを将来にわたって予測すること)とほぼ同じような利回りを得られました。
ところが、2年後の入居者との契約更新前に、空室が出た時点から状況が一変します。
A杜は水谷さんには何も相談せず、いきなり家賃を5000円も下げたそうです。
水谷さんが驚いて、「まだ新築なのに、下げる必要ないじゃないか」と尋ねると、「近くに新築物件ができたから、下げないと対応できません」ともっともらしいことを言います。
そのときは自分がアパート経営に関して素人なこともあり、「アパートの経営はそういうものなのか」
と思い、強く言い返すことはできませんでした。
「1部屋だけなら、いいか。他は満室だし」と思い、気を取り直したそうです。
その時点でも、まだA社のことを信じていました。
しかし、それからも空室が出るたびに家賃をどんどん下げ続け、結局5年もたたないうちに当初の手取りの4分の3ほどの額になってしまいました。
これでは、借入金の返済もできません。
どんなに抗議しても、「契約書では家賃については変えないという規定はありません」と取り付く島もありません。
「でも、家賃保証をしてくれるんでしょう?」
「当社は
確定した家賃で一括借り上げをしているわけではないですから。環境の変化など、さまざまな理由で家賃を変更せざるを得ない状況もあるのです」
こんな感じでのらりくらりとかわされ、何も問題は解決しません。
A社では、物件が建った後は担当者が変わり、A共済の別会社の人が窓口となります。
この共済では空室率の取り決めがあり、空室が出ると家賃を下げて入居者を募り、部屋を埋める規約があります。
そこには、オーナーさんの事情を考慮する姿勢などありません。
すべてA社の方針がA共済の主体となって動いています。
水谷さんはようやく、営業マンの笑顔に騙されていたことに気づきました。
親身になっているふりだけで、水谷さんの利益になるようなことを真剣に考えていたわけではなかったのです。
自分のノルマを達成するために、足しげく家に通ってきていただけなのです。苦情を言うと、営業マンは「申し訳ありません」と頭をぺこぺこ下げて謝りにきますが、その後で問題が解決するわけでもありません。
共済の担当者は、強制的に命令してきます。
水谷さんはノイローゼになるかと思うぐらい悩み、怒り、そして騙されたことを悲しんだそうです。
担当した営業マンを恨んだこともありました。
今はもう、あきらめの境地だそうです。
その物件を見るのも嫌になり、A杜に管理を任せっぱなしにして足が遠のいてしまいました。
そして、借入金は水谷さんの別の収入から補足して払い続けています。